"甘く青い記憶を着る"

幼いときは大好きで毎日着たいぐらいだったのに、大人になったら着ることをためらう。

成長して大人と呼ばれる年齢になったとき、カワイイはそんな服になっていることに気づく。

だけど、今になってもカワイイに心惹かれ、子供だけでなく大人が着てもいいのではないかと思うことがある。

 

自分の着たい服を楽しんで着る女性たちを、日本から遠く離れた地で知る。

ニューヨークのハーレムを度々訪れて気づいたのは、女性たちが肌を隠すのではなく、逆に綺麗に見せようと鮮やかな色とボディラインを強調するシルエットの服を自然に着ていたことだった。

そして、あるアメリカの風景を写した写真も目にする。

それはプロムで男性学生と踊る女子学生たちが、健康的に肌を見せるカッティングのドレスを着用し、笑顔を見せて楽しそうにする写真だった。

 

ビーズ刺繍は子どもの無垢な遊び心を、フリルやギャザーはキュートなものを大切にする少女の愛おしさを。

愛するガーリーでファンタジーな世界を、海の向こうで魅力を知ったセクシーなシルエットとビビッドなカラーパレット、その二つとミックスすることでセクシーはカワイイに変わり、カワイイはセクシーと混ざって少女から女性へと成長した人々が着る服へと近づく。

 

コレクションは年齢だけではなく、国境・文化の境界も越えるようにする。

油絵に見られる色が混ざってかすれた筆のタッチは、日本伝統の繊細な美意識に通じる。2本の異なる色の糸を一気に編み、色をランダムに表現した甘く淡いブルーとピックのニットは、一点一点色の現れ方が異なり、既成服であって注文服のような表情も見せる繊細さが生まれた。

西洋の女性たちが好んでいたセクシーでドレッシーという刺激は、日本の美意識による淡い色彩で甘く柔らかいワードローブへと中和され、年齢も人種も、国境も文化も超えて着られるカワイイになる。

 

少女だけでなく大人の女性も、日本の女性だけでなく海の向こうにいるあなたにも。カワイイを着たいと思うすべての女性たちが着られる服へ。

あなたが5年後になっても、10年後になっても忘れない甘く青い記憶を。


AW21 LOOK BOOK